映画感想『プロジェクト・ヘイル・メアリー』

ネタバレなしの感想

SF なのにコメディタッチ

SF映画、特にハードSFが原作となると、少し小難しい作品をイメージする人も多いかもしれない。実際、原作小説はそういった層に深く刺さる面白さがあったと思うが、映画版はより幅広い層に向けて、かなりコメディタッチに作られていたのが印象的だった。
(もしかすると原作にもコメディ要素はあったものの、自分がSF要素にばかり気を取られて気づいていなかっただけかもしれないが)
しっかりライト層にも受け入れられるような構成になっていた。

テンポ良し

この映画は上映時間が2時間50分とほぼ3時間の大作だ。しかしそれにも関わらず全くながさを感じさせないテンポの良い構成だった。
普段、映画を観ていてだいたい2時間半を超えると「そろそろ終わりかな?」「まだかな?」と少し長く感じてしまうことが多いのだが、本作に関しては「え、もう終わったの?」という感覚だった。体感としては2時間ちょっとくらいに感じるほど中身がギュッと詰まっていて、全くダレることなく最後まで楽しめた。

IMAXの客層の良さ

今回はIMAXシアターで鑑賞したのだが、改めて「IMAXは観客層が安定していて環境が良い」と実感した。

だいたい月に1回ほどのペースで映画館に足を運ぶのだが、通常のシアターだと、エンディングでスマホを触る人がいたり、ひどかったときは隣の人がマナーモードにしていなくて上映中にLINEの通知音が3回ほど鳴り、うんざりしたこともあった。
しかし今回はそういったノイズが一切なく、「プラス700円を払ってでもこの環境で観たい」と思っている質の高い観客層と一緒に映画を楽しめるのは、非常にポジティブな体験だった。
もちろん音響もスクリーンの迫力も◎。

比較的近所であるTOHOシネマズ錦糸町によく行くのだが、上映が始まって、場内が暗くなってから入ってくるお客さんがポツポツいることがよくある。後から入ってくるお客さんがいるとどうしても視界に入って気になってしまう。だが、今回のIMAX上映ではそういった遅れて入ってくる人もおらず、とにかく快適だった。
IMAX上映は公開から1〜2週間で終了してしまうことも多いので、見たい映画は公開後すぐに観に行くべきだなと改めて感じた。

他の観客も含めた楽しさ

今回は字幕版で鑑賞したのだが、近くの席に英語ネイティブの人が座っていて、リアクションが大きくて楽しかった。

例えば、ロッキーが人間にとっての「◯ね(親指を下に向けるポーズ)」を、サムズアップの意味合いでやってくるシーン。日本人からすると「クスッ」とするくらいの面白さだと思うのだが、ネイティブの人はそのポーズが出るたびにけっこう笑っていた。
また、日本人の我々は字幕を読んで面白いと感じたタイミングでリアクションをするが、ネイティブの人は『セリフを言い終わったタイミング』で笑うので、その反応の違いも面白かった。
自分とは異なる文化圏の人たちと同じ空間で映画を共有できるのも、映画館ならではの重要な体験だなと改めて感じた。(以前『トイ・ストーリー4』を観た際、夏休みで子供たちがたくさんいて、子供たちのリアクションと一緒に映画を楽しめたのも良い思い出だ)

できれば原作小説読んでから

今回は、原作小説を読んだ人3人、読んでいない人1人というグループで観に行ったのだが、結果的に全員が大満足だった。原作未読の友人も、ストーリーの大筋をしっかり理解して楽しめたと言っていたので、映画単体として十分に面白いと思う。
ただ、まだ映画も小説も触れておらず、「本を読むのが嫌いではない」という人には、『原作小説を読んでから映画を観る』ことをおすすめしたい。
映画は「ライブ感」を重視し、観ている間ずっと楽しさが途絶えないような構成が意識されている。一方の原作小説は、事実や主人公の認識を少しずつ積み重ねた上で、緻密に練り上げられた「伏線回収」や「驚き」が用意されている。その積み重ねの面白さは原作小説のほうが圧倒的だと思うので、できれば原作小説を読んでから映画を観ることをおすすめする。

ネタバレあり感想

泣く泣くカットされた?伏線

原作と比較すると、どうしてもカットされている部分は多々あった。
個人的には、燃料タンクにタウメーバが侵入してしまうくだりや、タウメーバを窒素に適応させる過程などが省略されていたのは少し残念だった。小説ではこの過程をロッキーと一緒に試行錯誤していくことで、二人の友情やバディ感がさらに深まっていく大好きなシーンだったからだ。特に燃料タンクにタウメーバが侵入するくだりは唐突感があったので、もう少し伏線が張られていれば…と思った。

ただ、上下巻にも及ぶあの濃厚なSF小説を映画1本にまとめること自体がそもそも無茶な挑戦ではある。カットされるのは仕方ないし、不満というよりは納得している。映画というフォーマットに落とし込んだことを考えるとクオリティは間違いなく高かった。

改変

友人とも話題になったのが、ストラット(超有能女性長官)のその後についてだ。
原作では「これだけの無茶をやったんだから、シャトルを打ち上げたら私はもう犯罪者扱いよ」的な雰囲気だったと思うが、今回の映画では、地球が氷河期を迎えつつある中で彼女がしっかりと指揮を執り、主人公から送られてきたサンプルやデータをベースに寒冷化を食い止めようとする様子が描写されていた。
この改変(追加)はハッピーエンド感があって、良かったと思う。

ラストシーン

最後、主人公がロッキーの母星の子供たち(エリディアン)に授業をするシーン。
普通に「英語」で教えていて、「いやいや、やばいな!」と心の中でツッコミを入れてしまった(笑)。第二外国語どころか、彼らからすれば「第何外国語だよ!」というレベルだろう。「そこは現地の言葉を学んで授業してやれよ!」と少し思ってしまったが、まあそういう細かいことは気にしないでおこう。